20年以上電車に乗れなかった人が電車に乗れた話

2025年に精神障がい者の運賃割引がスタート

障害者手帳
2025年に大阪で万国博覧会が開催されます。これに伴い、大阪府では精神障がい者を取り囲む環境が少し変わります。これまで身体障害者や知的障害者のみに適用されていた電車の運賃割引が、精神障がい者にも拡大されます。

当事業所に近い京阪電車では、2025 年 4 月に精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方を対象に精神障がい者運賃割引を導入する予定です。1) これによって半額の運賃が適用されます。

また、大阪メトロでは2025 年 1月から精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方を対象に精神障がい者運賃割引が導入されます。2)

大阪市在住の精神障がい者の方は大阪メトロが無料か半額

大阪メトロについては大阪市にお住まいの方なら現在でも精神障がい者の方にお得な割引があります。精神障がい者保健福祉手帳 1級、2 級で「無料乗車証」の交付を受けることができます。つまり大阪メトロに無料で乗れます。精神障がい者保健福祉手帳3級なら「乗車料金割引証」の交付を受けることができ、半額の運賃で乗車できます。3)4)

せっかく割引があるなら、どんどんお出かけして人生を楽しんでいただきたいです。実際に精神障がい者保健福祉手帳で利用できる割引をフル活用してお出かけを楽しまれている利用者さんもいらっしゃいます。
大阪城と京阪電車

20年以上電車に乗ってない利用者さんがいた

車窓山の景色
ところが、昔は電車に乗ることができたのに「今は乗れない」という方もいます。理由はそれぞれで「パニック発作を起こすかもしれないから怖くて乗れない」「大きい音や人が多い所が苦手」などです。

電車に乗れない方たちはあまり遠出をしなかったり、どうしても行く必要がある時は5駅以上ある距離を自転車で出かけたりします。若くて体力がある方なら遠距離を自転車で走るのは健康的ですが、年を取って体が不自由になった時には難しくなります。

電車が苦手になり電車に乗らないようにすることを「回避」と言います。都会で電車に乗れないと職業選択の幅が狭くなります。私生活でも行動できる世界が狭くなります。趣味や可能性を広げることができません。これが長く続くと刺激が少ない単調な生活になり、精神的にあまり良くありません。そこで20年以上電車に乗ってないという方2人に「一駅だけでも電車に乗ってみませんか?」と呼びかけてみました。

というのも、当事業所の最寄り駅である京阪電車の滝井駅と千林駅は関西圏では駅間が短いことで有名で、滝井駅のホームに立つと千林駅が見えるぐらいです。この「地の利」を生かして一駅間でも電車に乗る体験ができれば、いいきっかけになるのではと考えました。

滝井周辺地図
しかし真っ先に言われたのは「電車乗るの無理ー!」の一言でした。

電車に乗れる方法を考えてみた

たぶんそう言われるだろうと予想していました。では、電車にどうやったら乗れるのか。大きい音が苦手という問題について、ホームにいる時や電車内の騒音がどれほどのものなのかスマホアプリで計測してみました。測ってみると騒がしいスーパーの中と同じぐらいの騒音だったので、そのことを伝え「音が気になるなら耳栓を使いませんか?」と提案しました。

昔電車に乗っていてパニック発作を起こしたことがある方については、発作を抑える頓服薬を病院でもらうようにお願いしました。この他、ヘルプマーク、飲み物、電車賃の持参をお願いしました。乗車目標日を1ヶ月以内に定め、電車が空いている時間帯を設定しました。

こうして準備が整ったころ「駅だけでも見に行きませんか?」と声掛けしてみました。すると、「今日、電車に乗る!」という力強い返事が返ってきました。それではと利用者さんを連れて滝井駅に向かいました。
滝井駅

20数年ぶりに電車に乗る

「券売機はここにあって、ここを押して切符を買いますよ。」と切符の買い方を教えて改札内に入りました。

パニック発作が心配な利用者さんに「頓服薬飲みますか?」と尋ねると「飲まない」と答えました。大きな音が苦手な利用者さんには「耳栓使わなくて大丈夫?」と尋ねましたが、こちらも「耳栓使わない」と答えました。

ホームにある優先座席のマークを見せて「ここで電車を待ちましょう」と声掛けしました。夏に向かう午後の明るい陽射しの中、緊張の面持ちで電車を待ちます。
プラットホーム  
電車が来ると車内は空いていて、パニック発作が心配な利用者さんを優先座席に座らせました。発車しても緊張の面持ちでしたが1分と経たないうちに電車は千林駅に到着。電車を降りてせまいホームを歩きました。

改札を抜けて感想を聞いてみると「あっという間だった。平気だった。」という元気な声と、「降りた後から、足ががくがく震えてる…」という声が聞かれました。「今日はゆっくり休んでください。おつかれさまです。」と駅で解散しました。
優先座席

千林駅

意外とスムーズに電車に乗れた

久しぶりに電車に乗った感想をアンケートという形で後日聞いてみました。
「すっと電車に乗れたけど、電車を降りた時の方がドキドキが止まらなかった」
「怖くなかった」

反省点は
「電車乗る前に頓服飲めば良かった」
「電車賃無料ならもっと良かった」
ということでした。

次回の企画では乗車前に頓服を飲んでいただくのと利用者さんが電車賃を負担しなくていいようにしたいと思います。二人ともまだ自分一人で電車に乗れませんが、一駅間乗れたことで自信がついたように感じられます。今後も公共交通機関に乗る訓練を実施する予定です。

1)精神障害者割引を導入します.京阪電気鉄道株式会社.@press.2024.04.11.https://www.atpress.ne.jp/news/391669/amp

2)Osaka Metro と大阪シティバスで精神障がい者保健福祉手帳による割引を導入しますhttps://subway.osakametro.co.jp/news/news_release/20240411_seishin_fukushi_waribiki.php

3)交通機関乗車料金福祉措置.大阪市.https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007635.html

4)OsakaMetro 及び大阪シティバスの乗車料金割引.―障がいのある方へ― 福祉のあらまし(令和5年度版).https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/cmsfiles/contents/0000147/147230/012.pdf

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