マインドフルネス瞑想は、意識を「今に集中」して行う瞑想のことです。不安やストレスへ対処し集中力を高める効果がある手法として薦められています。
発達障害を持つ私がこのマインドフルネス瞑想を1ヶ月続けてみたらどのようなことが起こったのか、そのメリットとデメリットを実体験に基づいて紹介します。
※弊社YouTubeチャンネルにもマインドフルネス瞑想の動画があります。興味がある方はぜひご視聴ください。
レポート:発達障害者(ADHD)がマインドフルネス瞑想を1ヶ月やってみた
結論:発達障害者はマインドフルネス瞑想をやった方がいい
いきなり結論から言ってしまいますが、発達障害で悩んでいる人はマインドフルネス瞑想をやった方がいいです。
マインドフルネス瞑想で変化を実感できるまでには2ヶ月かかると科学的な研究では言われています。まだ1ヶ月しか体験していないのに熱く勧めるというのも変かもしれませんが、私の場合は1ヶ月続けただけでも効果を実感できました。
そこで、発達障害を持つ私の場合、マインドフルネス瞑想を続けたらどのような変化があったのかを紹介したいと思います。
マインドフルネス瞑想とはどうやるのか
ところでそもそもマインドフルネス瞑想とはどんな目的でどんなことをするのか、自分なりに説明します。マインドフルネス瞑想とは、「自分の今置かれている状態を、ありのまま見つめる瞑想法」だと私はとらえています。調べてみると、マインドフルネスとは「今ここでの経験に、評価や判断を加えるのではなく能動的に注意を向けること」とありました1)2)。例えば、部屋のエアコンの音や、微風が手に当たる感覚、自分が呼吸したときの体の動きがどのようになっているかを観察すること。そしてその中で思い返される辛い思い出や将来の不安についても、「自分は今つらい思い出を思いだしてつらい気分になっている」というふうに自分を客観的に見つめることが、マインドフルネス瞑想の姿勢ではないかと思います。
マインドフルネスとは、
今、この瞬間を大切にする生き方のことです。
①目を閉じたままリラックスします。
②呼吸は、自然に行います。
呼吸を長くしたり、無理に吐き切ろうとしたりせず、
自然に呼吸をしてください。
③心と体を落ち着けて、呼吸に意識を集中します。
ポイントは意識を「今」に向ける事です。
過去や未来の事を考えて恐怖や不安を作り出さず「今に集中」します。
雑念が入ってきたら意識を「今」に戻します。これを繰り返します。
毎日継続することで「心が穏やか」になり「集中力を高める」事が出来るようになります。
一流企業で採用されているマインドフルネス瞑想
マインドフルネス瞑想は、うつ病の治療に取り入れられたり、能力開発の現場で用いられたりしているようです。またGoogle(グーグル)の社員研修で採用されているそうです。世界的な有名企業で採用されるくらいですから、明確に効果があるものなのでしょう。
次に脳科学的な視点で、マインドフルネス瞑想によって期待される効果をみていきましょう。マインドフルネス瞑想を行うことで、脳の構造に大きな変化がみられることがわかっているそうです。不安や恐怖を司る部位である扁桃体という部分が小さくなるそうです。この扁桃体が暴走すると、パニックを起こしたり、ストレスが高い状態になってしまったりするとのこと。発達障害を持つ人はこの扁桃体のコントロールがしづらく、そのため衝動的な行動を起こしてしまうことがあります。また、二次障害でうつ病を発症してしまう人もいます。扁桃体を小さくして暴走を抑えることができれば、不安やストレスといった負の感情に支配されにくくなるというわけです。
マインドフルネス瞑想には、集中力やストレス耐性の向上などの変化があると一般的にいわれています。マインドフルネス瞑想を行うと「メタ認知能力」が鍛えられると言われています。メタ認知能力とは自分の状態を客観視する力で、これがあると自分本位な行動が抑えられたり、ワーキングメモリ(作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力)が向上したりするといわれています。
私がマインドフルネス瞑想を始めたきっかけ
マインドフルネス瞑想を始めたのは、発達障害の特性を抑えたいと思ったからです。私の場合、
・集中力が続かない
・言われたことをすぐに理解できなくて、忘れてしまいやすい
・相手の立場に立って物事を考えられない
という特性があり、これが少しでも改善されるならやってみようかと思い立ちました。実際にマインドフルネス瞑想をやってみて大きな変化が3つありました。
大きな変化その1.自分の感情をコントロールできるようになった
発達障害を持つ人は嫌な思い出や恥ずかしい出来事が急に思い返される「フラッシュバック」に苦しめられることがあります。私も恥ずかしい出来事やいじめられた経験がたくさんあって、フラッシュバックに苦しめられることが多いです。瞑想を行っている時にも何回か嫌なことや腹が立つことが思い返され嫌な気分になりました。その時に、「私は今嫌なことを思い出して嫌な気分になっている」と自分で認めることで、気持ちを冷静にすることができるようになりました。仕事中に何か嫌な気持ちになったり、不安を感じたりしても、その感情に支配されている自分を冷静に認識できるようになりました。
大きな変化その2.集中力がアップした
発達障害を持つ人、特にADHDはその飽きやすい性格から、物事に集中し続けるということがとても苦手です。そのため、あちこちに手を出すものの一つの事に集中できず、きちんと完遂させることができなくて、結果的に職場では「使えない人」というレッテルを貼られてしまいがちです。そこから抜け出すには、自分をコントロールして、物事を継続して完遂させる実行力を鍛える必要があります。
マインドフルネス瞑想で意識を自分の呼吸や自分が感じていることに向け、それを繰り返すことで、自分をコントロールできるようになったと思います。勉強や運動など継続が必要な物事を続けやすくなったと感じます。
大きな変化その3.自分に自信が持てるようになった
これはマインドフルネス瞑想を続けて一番実感していることです。不安な感情が湧きおこるたびに自分を客観的にみる癖がついたので、不安な気持ちに支配されず、不安の要因を取り除くためどのようなことをすべきか冷静に考えられるようになりました。また嫌なことが起こっても、マインドフルネス瞑想を行えばある程度対処できるというように自分の中で自信ができたような気がします。
マインドフルネス瞑想を行うにあたって難しかったこと
とはいえ、マインドフルネス瞑想を行うにあたって難しいと感じたことがいくつかありました。「今ここに意識を向ける」ということはシンプルに聞こえますが、やってみると奥が深いです。
私がマインドフルネス瞑想をやることで難しいと感じたのは以下の点です。それぞれ対策についても記載するので、同じ障がいを持った方でマインドフルネス瞑想を始めたいと思われた方は参考にしてほしいです。
1.「今ここ」に集中することが難しい ― 音楽に合わせて集中
瞑想していると雑念や嫌な思い出が出てくることがあります。どんなに「今ここに意識を向ける」状態になれたとしても、無意識に嫌な思いや雑念が頭のなかをよぎってしまうことがあります。仮に空調の音に集中していても、その空調の音が自分の嫌いな職場の空調の音と似ているかもと思い、トラウマを掘り起こしてしまうことがあるかもしれません。これは私独自の瞑想方法ですが、音楽(インストゥルメンタル)を聴きながらやるのがおすすめです。特にリズムが一定のものがいいです。私の場合、音楽のリズムに合わせて息を吸い、息を吸う時よりも長くゆっくりと息を吐き出します。この方法で、余計なことを想い起こすことなく意識を集中させることができました。
2.正しい姿勢を保つのが難しい ― 多少だらしなくても続けることに意義がある
発達障害の特性として姿勢が良くなくて、その結果、肩こりや腰痛が発生してしまうということがあります。マインドフルネス瞑想の本では、背筋を伸ばして正しい姿勢で行うようにと書かれている本もあるようですがが、それをすると私たちは非常に疲れてしまいます。疲れてしまうと続けるのは難しくなります。正しい姿勢の方が脳に酸素がたくさん供給されるので身体的にはいいそうですが、続けられなくては意味がありません。発達障害の人の場合、まずは続けて習慣化することが大事。正しい姿勢を保つことができなくても、瞑想を続けることを目指してください。
3.忙しくて時間が取れない ― 目標を下げて30秒やってみる
発達障害を持つ人、特にADHDの方はスケジュール管理が苦手なため、瞑想をするための時間が取れないことが多いです。私も最初はなかなか時間をつくるのに苦労しました。瞑想のために15分確保するより、好きなテレビやYouTubeを見たいと思う時だってあります。
そんな時の対策として、目標を下げることをおすすめします。毎日15分瞑想するのが難しければ、10分、5分と目標を下げ、最低30秒以上でも瞑想をすることをノルマにしてしまいましょう。これで「やらないといけない」というプレッシャーを軽減でき、かつ「今日もできた」という達成感が得られます。「今日は瞑想できた」と思えると自己肯定感が出て、やる気アップにつながります。
まとめ:発達障害を抱えている人はマインドフルネス瞑想をやった方がいいです
マインドフルネス瞑想をやることで、集中力が上がり、こなせる仕事量が増えたり、精神的に安定できる場面が増えたからです。
たった1ヶ月継続しただけで、変化を感じることができました。2ヶ月、半年と続けていけばさらに効果を見込めるかもしれません。発達障害があってマインドフルネス瞑想が気になった方は、参考にしていただければと思います。
文献
1)KabatZinn. Full Catastrophe Living (Revised Edition): Using the Wisdom of Your Body and Mind to Face Stress, Pain, and Illness. Bantam, 2013, 720p.
2)杉浦義典 (2008). マインドフルネスにみる情動制御と心理的治療の研究の新しい方向性 感情心理学研究 , 16, 167-177.
編集 中川健司 ブレスコーポレーション株式会社 代表取締役 一般社団法人どんぐりの会 代表理事 宅地建物取引士 依存症・神経症・うつを克服し社会福祉に貢献したい思いから社団法人どんぐりの会を立ち上げる。生きづらさの根本的解決のためのサポート実現を目指し、医療と連携したリハビリ施設ブレスコーポレーションを起業。最新機器や脳科学を取り入れながら発達障害の「特性緩和」、うつや双極性障害、神経症、依存症などの「根本的改善」をサポートする。 |